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1.しあわせの液体

醤油麹

米麹を入れるまで、うかつにもその名すら知らなかった。

お客さんに

「麹は何に使われるのですか?」

と図々しく尋ねたところ、

塩麹6,醤油麹3、その他1

くらいの割合の回答だった。塩麹は日系スーパーでも売っているが、料理好きの本格派は、自作するようだ。

しかし醤油は、塩より食卓で普通に使う。納豆に塩を入れる人は少数派だろう。だから、「使い勝手がいい」という理由で、醤油麹を作った。

・対比

結論をいえば、これはぜひ作った方がいい。

醤油は、サラッとして水っぽく、しょっぱい匂い。

それが醤油麹になると、ふんわりとした甘い香りを放つ。

糖分解過程で麹菌が放出した、腸活にも良さそうな各種成分を物語るように、トロっとした濃厚すぎるほどの仕上がりになる。

抗生物質入りの穀物で、牛舎で育てたホルスタインの低脂肪乳(しかも特売)
VS
放牧草自然育ちのジャージー種の濃厚牛乳(1本300円超)

の違いといえば、なんとなくわかるはず。

とにかく、卵かけご飯にも納豆にも、卵焼きに、肉じゃが、筑前煮…醤油を使うならなんにでもいける。

あら奥さん、うちは醤油麹ざますのよオホホ、なんて、口元を隠した優雅な山の手風マウンティングもできる。

「マヨラー」っている。なんにでもマヨネーズつけて食べる人。

俺なんか醤油麹ラーになったくらい、食卓に醤油麹が不可欠になった。

ご飯にめちゃくちゃあうんだ、これが。甘じょっぱくて濃厚で。

「醤油かけご飯」といえば、昭和な香りそよぐ、夜行列車で奈良の十津川村から上京したような、貧乏学生の代名詞。昔は俺も何度かやったさ。

これが

醤油麹かけご飯with黄身につまようじが刺さるレベルの健康卵

なら、生まれも育ちも千代田区育ち、コンサバ系だけどホントはちょっと冒険してみたいご令嬢がお召し上がりでも、まったく問題ない。

要するに、醤油を使うシーンで醤油麹を使ってみると、確実に格があがる。

醤油麹は食卓のど真ん中にぜひぜひ。人を幸せにする魔法の液体は、お酒だけではない。

家時間が増えて、ストレスの暴流が家庭内を支配する、澱んだ街角のようなこの時代、これでみんなに幸せになってほしい。

・作り方

ヨーグルトメーカーなど温度管理の器具は必要なく、常温で大丈夫。

たとえば、乾燥米麹300gに、最初300mlの醤油を入れる。

米麹がその醤油を、スポンジに水を含ませるかの如く全部吸ってしまう。そこにさらに300mlの醤油を足す。

いや、300mlといわず、ヒタヒタになるくらい醤油を入れてもいい。

で、家のいちばん温かいところにおいて、「おいしくなってね~」と声をかけつつ、最低2週間くらい1日1回空気と混ぜていると、米麹が分解されて発酵していく。

甘じょっぱい、得も言われぬいい匂いが漂ってくる。食いしん坊のあなたは、パブロフの犬のように大いにごはんが欲しくななるだろう。

ちなみに、新米と一緒に、石川は金沢の直源醤油さんから、米麹ではなく、醤油麹が入荷する。自作されない方は、ぜひこちらをご購入されたし。

社長曰く、「ステーキにも合います」とのこと。

・醤油選び

醤油麹に使う醤油は、「大豆、小麦、米麹、塩」のみの、余計なものが入っていない醤油で作られたし。

大豆は、「丸大豆」か「脱脂加工大豆」が醤油の原料になる。

「丸大豆」は原料そのままの丸い大豆。「脱脂加工」は発酵しやすいよう、油分を抜いてフレーク状にしたもの。もちろん、「丸大豆」が醤油本来のまろやかな風味。

原料を確認すると、普通はいろいろ入っている。

つまり、安く作るためにアミノ酸、甘味料、保存料などで手を加えたものは発酵の邪魔になるだけで、醤油麹作りには適さない。

こういう観点から醤油を選んでも、買い物がきっと楽しくなるだろう。

星州系通販では、残念ながらこういうところまではわからない。