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田植え~収穫・玄米ができるまで

特上米コシヒカリの四季 ー 石川県白山市より

 生産者である(株)六星(石川県白山市松任)協力のもと、当店取り扱いの特上米コシヒカリ(無農薬・無化学肥料)の生産風景を、豊かな日本の四季とともにお伝えできればと思います。

水田から望む、日本三名山の1つ白山。雄大な自然が、特上米を育む。
水田から望む、日本三名山の1つ白山。雄大な自然が、特上米を育む。

序章 桜の頃

 田植えの前段階で、種籾から発芽させ、田植えできるように苗を育てる作業があります。

種籾を32℃のぬるま湯に24時間つけ、循環させることで発芽を促します。(催芽機)

種籾を苗床にまきます。しばらくすると、可愛らしい緑の苗が伸びてきます。

写真は水。化学肥料を使わない特上米は成長に勢いがないため、寒暖差の激しい春先の気温に負けないよう、水を使って安定化させます。

分かりにくいですが、発芽した種籾がたくさん入っています。

苗床には植物性・動物性の有機肥料を混ぜ込み、成長を促します。

化学肥料を使った一般のお米は、そのままハウスで成長を待ちます。黙っておいておくだけなので、手間がかからなそうです。

 黄緑色の苗が特上米。濃い緑の苗が、窒素化学肥料で育てた一般のお米。この段階からすでに、無農薬・無化学肥料はひどく手間がかかりそうな予感です。

 

第2章 若葉の頃

 無農薬・無化学肥料の特上米はデリケート。農薬と化学肥料を普通に使ったお米と比べて、栽培には何倍も手間がかかります。5月中旬の田植え風景をのぞいてみます。

 特上米は有機肥料のみで育つので、成長が緩やかです。そのため、急成長する雑草に土壌中の養分が奪われやすく、しかも無農薬なので、その雑草も駆除しづらいのです。そこで…

 活躍するのが、活性炭入りの紙マルチです。これを水田の上に敷き、その隙間から苗をポッと出してやることで、雑草に日光が当たらないようにする仕組みです。

 写真では判りにくいですが、田植え機に紙マルチのローラーを取り付け、苗を植えていくと同時に、その下に紙マルチを敷いていくという手法です。

 紙マルチは、45-60日かけて水田の中に溶けていきます。活性炭入りで、それがそのまま、土壌にアルカリ分を与える土壌改良剤の役割も果たします。また、炭効果で土壌中に空気が混ざり、微生物も住みやすくなります。

 水田が直接見えないと、畑と区別がつきませんが、一面の紙マルチから、ピヨッとした苗が顔を出しています。これで稲は、雑草に栄養を奪われることなく、育っていきます。

 

第3章 新緑の頃

一か月ほどたったころの様子。紙マルチの遮光効果で、除草剤がなくても雑草ゼロ
一か月ほどたったころの様子。紙マルチの遮光効果で、除草剤がなくても雑草ゼロ
紙マルチを使ってない水田では、途端に雑草が。無農薬の場合、これを人力除草する。
紙マルチを使ってない水田では、途端に雑草が。無農薬の場合、これを人力除草する。
おたまじゃくしがいっぱい。紙マルチの無農薬水田は、ミジンコ、タニシなど微生物天国です。
おたまじゃくしがいっぱい。紙マルチの無農薬水田は、ミジンコ、タニシなど微生物天国です。

第4章 カエルの啼くの頃

 活性炭入りの紙マルチは、土と同化してしまいました。夏場は雑草繁殖の時期。ほおっておくと、こんなに長い雑草が生い茂ってしまいます。

 そこで活躍するのが、雑草退治用のこちらの機械。通称「ももたろう(稲造名づけ)」。5枚のローラーを回して、稲株の間に生えた雑草を、水田の中に埋め込ませてしまうというもの。1本1本抜くより、作業的には楽ではある。

 普通なら除草剤で楽に撃退するところを、このように、人間が手押しでひたすら雑草を土中に埋め込んでいきます。無農薬米の生産がいかに大変か、よくわかる光景です。

 水田は、土ではなく「泥」ですから、足がぬかるんでなかなか前に進めない。カエル啼く水田で、まさに体力勝負のど根性作戦。

 先輩、愛っスよ、愛。

 向こうに小さく見える青年。梅雨明けのこの日の気温32℃。青年は、雑草退治マシン「ももたろう」とともに泥の中をひたすら進む。彼らが通った後には、文字どおりペンペン草も生えていませんでした。

 

第5章 蝉時雨の頃

 8月上旬。先月はまだまだチビの小学生で、次々に生えてくる雑草に負けそうだった特上米の稲たち。さんさんと浴びる太陽の下、グン!と伸びて高校生くらいになりました。

 よく見ると、穂が出始めています。

 

 

 青々とした稲穂から、白いプチっとしたのが顔をのぞかせています。これが、稲の花です。

 花は早朝に咲き、風に吹かれた花粉がめしべが受粉。昼前には花もその短い役割を終えます。

 そしていよいよ、ご飯になるでんぷん質が、稲穂の中にどんどん蓄えられていきます。

 この稲穂のどれかが、はるばるシンガポールへと輸出されていきます。

 

黄金色に実るあきたこまち ー 収穫

 

 秋田県の収穫時期は、9月中旬から10月中旬にかけて。この時期はちょうど台風来襲時期と重なり、風によって倒される稲も多数見られます。

 

 土壌の硬さ、根の張り方、茎の太さ、丈の長さ、稲の実り具合により、条件が悪いと収穫目前にも関わらず、見るも無残に全滅している水田も見られます。

 

 この水田はどこも倒れておらず、芸術的な実り方。超A級の農家さんによるあきたこまちなのでありましょう。素人兼業農家さんのお米より、プロ専業農家さんの技術とプライドにより生産されたお米のほうが、美味しそうなイメージがあります。

 

 ちなみに、山の向こうは岩手県です。

  近くで見るとこんな感じです。

 

 今年は全国的に台風、大雨、ゲリラ豪雨と水害のひどい年でした。秋田県は県北と田沢湖近辺を除き、概ね穏やかな気候だったので、作柄は平年並みとのことです。

 

 これで平年並みだったら、豊作の年になると、もっとぎっしり穂が実っているということなのでしょうか。ちなみに、多いところで10アール(10M2)あたり600キロ以上の玄米が収穫されます。全国平均は540キロ前後のようです。

 その昔、上の写真のような「絣(かすり)」と呼ばれるカラフルな色と模様を持った作業着を着て、農作業に勤しんでいた秋田美人。絣は冬の農閑期に、奥様方が内職の手作業で作っていたということです。

 

 今では、イベント時に秋田おばこ(秋田美人の娘)のコスプレくらいでしか披露されなくなりました。色のついた糸を編みこんでいく手のこんだもので、現在なら普通に購入すると結構な金額だそうです。

 

 「あまちゃん」の海女さんたちも絣半纏を着てウニを獲っていましたね。昔の農林水産業に従事する女性たちの、ささやかなおしゃれだったようです。

 絣を着た秋田美人は、地元のイメージキャラクターにも採用されています。

 

 左は、県南のヤマダフーズさんが販売する「おはよう納豆」のキャラクター。右は、その近所にある美郷町に入ったことを知らせる看板のキャラクターです。その他、各産地が販売するあきたこまちのパッケージにも、絣を着た秋田おばこが採用されています。

 

 小野小町風のイメージキャラクターは、そろそろその役目を終えたみたいです。

  で、収穫されたおコメは、農家さんたちが自分で右のような設備を設け、玄米にします。

 

①乾燥機→②脱穀機→③石抜機→④小米選別機→⑤色彩選別機→⑥袋詰

 

という工程をへて、玄米までになります。

 

①の乾燥機は、温風に8時間ほどかけることで、水分含有量を15%以下にする作業です。乾きすぎるとコメが割れますし、15%以上になると「1等米」というランク付けがなされない上に、品質劣化の原因にもなります。

 

②脱穀機により、モミを玄米にします。

 

③④は同時に行われるようですが、1.9ミリ以上の玄米を「小米」として分類し、さらに、カメムシに食べられてしまい、黒く着色してしまった玄米を、色彩選別機によってはじき出します。

 

 良くも悪くも、日本のおコメは規格品。野菜と同じで、店頭に並べられるレベルにするために、費用がかかるわけです。だからこそ、日本の米は見た目にも優れ、世界的に見ても良質な味を誇るのです。

 

 ③④の工程がいないと、品質にかなりのばらつきが出てしまい、日本のコメは世界的にも評価されなくなってしまうでしょう。

 

 なお、はじかれたコメ(規格外のコメ)は、2等,3等と格付けされ、味噌やせんべいなどの加工食品用に使用されます。

  袋詰めされた玄米は、定温定湿倉庫を持つ集荷場所に集められます。

 

 湿度は70%以下、気温は15~18度という条件下においては、玄米の劣化速度は極端に遅くなり、来年になってもおいしく食べられます。ただし、古米は乾いて水分含有量が落ちてくるために、パサパサしたおコメになります。

 

 ちなみに、政府買い入れの備蓄米は15度以下の環境で、7,8年保存されています。食べられることは食べられますが、とても日本の家庭市場で求められるレベルではありません。

 

 年に数度入札が行われて市場に放出されます。おそらく、少しいいコメとブレンドされ、給食や公官庁の食堂等を通じて消費者の口に入るのだと思います(?)

 

 ともあれ、稲造米穀店は、産地の定温定湿倉庫の保管条件を維持するために、リーファー(冷蔵)コンテナを利用し、シンガポールに定温定湿倉庫を借り、皆様にベストな状態での産地直送米をお届けいたします。