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2020年5月18日

 

 舞台は中世ドイツ。ネズミ駆除の礼金を踏み倒された腹いせに、子供たちを集団誘拐した男がいた。

 この「ハーメルンの笛吹男」には元ネタがある。

 130人の青少年が失踪したという怪事件は、1284年、ハーメルン市の市史にも記録された事実。

 当時のドイツは人口爆発で食糧不足。子どもたちは、口減らしのために新天地の東欧開拓へ向かったという説が、今では有力である。

 東方植民は当時一般的だったが、その規模が一度に130人と当時としては非常に大きなものだったから、違う事実とひっついて妄想で肥大し、事実が「伝説」と化した。

 その後、欧州をペスト災禍が襲った。人口は半分とも3分の1になったともいわれているが、その破壊を経て、欧州はルネッサンスという再生を果たす。

 さて。

 今回のコロナ災禍は、ビルゲイツの陰謀らしい。世界人口を半分に減らし、人類に再びルネッサンスをもたらす。で、ゲイツさんは神となり、そして伝説に…というプロットらしい。

 まて。

 これはダン・ブラウンの「インフェルノ※」と同じではないか。まったく、短絡的な妄想だ。

 伝説とは、小さな事実に、他の事実や妄想が加えられたもの。それを作りたがる現代人の性質は、中世人と変わっていないようだ。

※北イタリアを舞台に、ダンテの「神曲」に散りばめられた謎を解き明かしつつ、狂気の遺伝学者が仕組んだウイルスの脅威に立ち向かう、学者と女医の話。2016年映画化。

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