SHOW SIDEBAR

2021年4月14日

 

春休みが明けると、午後のコンド前に母さんたちが壁を作る。

そこに差し掛かかると、きたなめなローカルおじさんのふりして通りすぎる小心者こそがまさに、この男一匹稲造である。

一体、あそこでどんな会話が交わされているのだろう?

おそらく、アスペ気質の空気読まない系母さんが何千人かに1人はいて、真面目な顔して突然、なぜか隕石の話を始めるのだ。

火星と木星の中間に広がる、小惑星帯ってあるじゃない?

太陽ができて、同時期に木星ができて、そのあとに岩石がくっつきあって、水星、金星、地球、火星とできたのね。

最後に、もう1つできようとしたの。でも、木星の強力な引力に引っ張られて、その岩石群はまとまることができなかったの。

それで、その空間には今も大量の小惑星が散らばったまま。

地球に隕石が降ってくるでしょう?そのほとんどは、木星の引力にはじかれて、そこから飛んでくるらしいの。

8億年前、地球に衝突した隕石の1つに、大量のリンが含まれていたんですって。

リンは、植物の実や花を大きくする主要栄養素。だからその隕石は、地球の植生に多大な影響を与えたのね。

もちろん、動物にもリンは不可欠。骨や歯、細胞膜やDNAなどの構成要素ですもの。

ほら、原子はエネルギーに変わらない限り、不滅の存在。

質量が不変なら、私たちの中のリンは、その隕石とともに飛来したもの。さらに、水は木星の引力で軌道を変えた彗星の衝突で、地球にもたらされた、といわれているの。

だから、生物は地球で誕生したけど、その構成要素は木星由来の隕石や彗星による…

つまり、太陽が私たちの母なら、父は木星なのね!

と、次第に目に熱い光を帯びてきた母さんの宇宙ロマンは、はるか太陽系へとはばたく。

そして、チビたちを乗せたバスが止まったところで、聞き役のママ友は、ようやく解放される...かと思いきや、血は争えぬ。次はバスから降りてきたチビが突然、

太陽はね~11年周期で磁極を変えるんだよ~、などとその母よりさらに輝く瞳で、聞き役のママ友に語り始めるのではあるまいか。

彼女は聞き上手だから、興味津々なフリしてひたすら相槌を打つのだ。

そんな楽しい妄想とともに、アスペ気質で微妙にADHDも混じったコミュ力微妙な米屋のおじさんは、あの壁の横をコソコソとうっちゃるのであった。