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2020年7月8日

 

 ジャーの良し悪しは内釜次第。

 つまり、

①高温に耐え、熱伝導性に優れる
②その熱を均質に、まんべんなく伝える

の形質形状でなければならん。日本メーカーも様々だが、調理家電の世界的メーカー・フランスのTifalも見過ごせぬ。

 まず、米に熱をしっかり通すためには、高温高圧力に耐えうる厚釜であるか。

 シンガポール人に売れ筋のペラッペラのプラスチック釜みたいなチャラいのでは、美味しく炊くのは諦めるべし。

 購入価値があるのは、5層6層7層...と丁寧なレイヤーが施され、手に持ってずっしり重たいもの。

 明治期のお父さんみたいな頼れる存在感と、ものがものなら、おばあちゃんが思わず拝んでしまう神々しいまでの貫禄十分な内釜

 内側には剥がれない特殊なコーティングが施され、チャラい釜のように米粒がいちいちくっつかない。

 手先でミクロの凹凸を判断する、鋳物工場の社長の汗まで想像させる魂の一品で、釜の寿命も長い。

 下部が角ばって平でなく、ローマ彫刻やルネサンス絵画の豊饒な女性像のように芸術的丸みを帯びていると、熱を下から横から斜めからと、全方向的に伝えることができる。

 そういった釜はグツグツ炊き込む段階で、釜内部で米を「炎舞炊き」さする。熱を米全体にまんべんなく、粒の芯まで行きわたらせることができる。

 イメージ的には、釜が地球内部なら、米はマントルだから、釜全体で対流することが重要。

 ペラい内釜は対流が生じず、底でグツグツ煮えるだけ。この違いは山よりも高く、海よりも深い。

 へ行ったら、まずはジャーから釜を取り出し、千利休が名器を見出すが如く、妥協なく吟味しよう。

 シンガポールには10万円台の超高級ハイテクジャーはないが、この国では高級価格帯である200~300ドル代でも、良品は見つかる。

Ⅲ.
 個人的な話になるが、ただでさえ柔らかいミルキークイーンに、どうも固さが残るようになったのが、買い替えのきっかけだった。

 そして、上記に挙げた観点からジャーを購入。(Tifalの6層チタンコート、丸底厚釜)

 炊いてみると...

 同じ米なのに、ジャーが違うとこんなに違うんだ!と、食べた瞬間、私の瞳は光を宿した。

 もちろん、そんなジャーを迎え入れる家庭の食卓は、その晩から再び笑顔に満ち溢れる。

 美味しいご飯をありがとうと、そのうち愛情まで芽生え、毎日慈しむように拭いてあげることだろう。

Ⅳ.
 「人は見た目が9割」だそうですが、ジャーは中身の内釜基準で選んでみてください。

 日本へ帰ったら、10万払っても惜しくないような、大業物クラスがたくさんあります。迷いますが、まずは内釜から評価してみるといいでしょう。

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